健康コラム
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最近、ちょっと「むねやけ」が…、もしかしたら逆流性食道炎?
みどり野診療所所長 豊田 浩二医師
どんな症状?
「むねやけ」は、最もよく見られる代表的な症状です。そのほかにもいろいろな症状を感じることがあります。例えば、みぞおちの辺りから胸の下の方にかけて、焼けつく、あるいは熱くなるような不快感があります。また、喉の方まで上がってくる感じがあり、痛みをともなう場合もあります。「むねやけ」は食道へ胃酸が逆流することによって起こる食道の炎症です。
どうして逆流が起こるの?
どうして胃酸が逆流し、「むねやけ」が起こるのかを知っていただくため、消化管のしくみについて詳しくご説明します。口から食道、胃、小腸、十二指腸、大腸、肛門までの一本の長い管が消化管、全長約10メートルにもなると言われています。食物は消化管を移動しながら、分泌されるいろいろな消化液の作用で分解され、さらに消化・吸収されます。「むねやけ」は主に胃液の逆流によるものです。
その原因は?
下部食道括約筋や食道裂孔の緩み、食道のぜん動運動が悪い、胃の圧力が上がるなどがあげられます。なぜ食道に胃液が逆流すると炎症がおきるかというと、胃液の強い酸性や唾液の分泌に関係があります。胃液には胃酸が含まれていますが、その正体は塩酸でPH1・0~1・5と非常に強い酸性を示します。いっぽう、食道の中はPH7・0と、中性に保たれていますが、胃とは違って胃酸を防御する構造・働きがないため、胃酸が逆流すると炎症が起きやすくなるのです。
「むねやけ」だけでなく、胃のもたれ、胸の痛み、喉がおかしいなどの症状があったら、一人で心配したり、自分で判断するのはよくありません。「むねやけ」、つかえ感、胸痛という症状は「逆流性食道炎」の他に、食道がんや胃がんなど、怖い病気の症状と似ています。
検査方法は?
「むねやけ(逆流性食道炎)」の診断には、食道内視鏡検査が欠かせません。もっとも信頼性が高い方法のひとつで、口から細い管(内視鏡)を入れて食道の粘膜の状態を直接観察します。電子スコープ検査では、食道や胃の中の様子をテレビモニターで見られるために確定診断が可能となり、治療の経過も観察しやすくなりました。
思いあたる症状のある方は、一度、診察を受けてみてはどうでしょう。
「暮らしとからだ」第579号(2012年5月1日付)