健康コラム
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歩行障害について「健康寿命を延ばしましょう」その2 特発性正常圧水頭症
汐田総合病院 脳神経外科科長 山内 達也医師
「以前は普通に歩けていたのに、歩きが小刻みで足を左右に広げて歩くようになった」というのが特徴です。その他の症状としては、物忘れや尿失禁が同時に見られることが多いといわれています。
60歳以上の年齢の方で、このような症状が出現したらこの病気が疑われますので、速やかに神経内科もしくは脳神経外科に受診することをお勧めします。
特発性正常圧水頭症とは
水頭症というのはその名の通り頭の中に水が溜まる病気です。正確に言うと髄液という誰にでも頭の中を流れている液体の流れが、正常ではなくなり(多くの場合原因は不明です) 、脳が正常に機能しなくなる病気です。
外から見て頭に水が溜まっているのが解るわけではなく、MRI検査などで頭の中を検査して初めてわかる病気です。これまで年のせいとか、認知症だからといって、あきらめていた患者さんの中にも、この病気の方がいるとも言われています。
適切な時期に適切な治療をすれば治る病気
最大の特徴は前回お話した頚椎症と同様に、適切な時期に適切な治療をすれば治ることです。この病気を診断するにはMRI検査などを外来で行います。
それでこの病気が疑われた場合は髄液穿刺試験という検査を2、3日の入院で行います。
つまり実際に頭に溜まっている水(髄液)が、腰にまで流れてきているところで水を抜いてみて、症状が改善するか否かをみます。
この検査で一定度の症状の改善が認められれば、正常圧水頭症と診断され、手術治療をお勧めすることになります。手術は安全性がほぼ確立された手術で、腰から腹部にカテーテルという細い管を埋め込んで、水(髄液)を絶えずお腹に流すような通り道を作る手術を行います。
通常は1、2週間の入院で可能です。しかし症状があまりにも進行してからでは、手術をしても症状の改善は期待できません。
当院では、脳神経外科を中心に特発性正常圧水頭症の治療を積極的に行っており、日本正常圧水頭症学会のガイドラインに則って、最新の治療を行っています。
「暮らしとからだ」第574号(2011年12月1日付)