健康コラム

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糖尿病の合併症について(3)

梶山診療所所長 岡山 豊

大血管障害~動脈硬化(脳卒中・心臓病・下肢閉塞性動脈硬化症)

80歳の男性、糖尿病と高血圧・高脂血症で65歳から内服治療をしていましたが、コントロールは不良であったようで、74歳で脳梗塞を起こして左半身が不自由になり、78歳で左の太ももの動脈が狭くなって治療を受けましたが、左足を引きずる歩き方を後遺しました。79歳で二度目の脳梗塞、歩行や呂律がさらに悪化し認知症も顕著になりました。

その後、私の外来に初診されたとき糖尿病・高脂血症・高血圧に対して様々な薬を内服されていましたが、血糖値347mg/dl、HbA1c 8.1%(糖尿病の指標)、LDL-コレステロール162mg/dl、血圧158/65mmHgと高く、また糖尿病による腎障害や神経障害・網膜症も認めました。食欲が旺盛で和菓子などの間食も多く、他院で指示されていた1400kcalの制限を全く守れないとのことでした。

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御家族は、すでに度重なる血管障害で不自由な身体となっており、また高齢でもあることから、再発の心配をしながらも御本人の欲求をある程度満たして上げたいとの意向でした。そこで糖尿病食の導入や間食の制限をお願いしましたが、食べ過ぎる傾向は続きました。3ケ月後、昼食中に突然亡くなられました。急性心筋梗塞でした。

血糖コントロールが悪いと

糖尿病で血糖コントロールが悪いと動脈硬化が進みます。腎臓や眼や足の指といった細い血管での障害だけでなく、心臓や脳や太ももといった太い血管でも動脈硬化は進行し、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、下肢閉塞性動脈硬化症などを起こします。心臓を養っている血管(冠動脈)が細くなって狭心症や心筋梗塞を起こす危険因子については様々な研究があり、図のように危険因子の数が増えると加速度的に発症リスクが上昇します。そこで最近では、肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症の4項目を重視し“メタボリック症候群”という名前で注意が喚起されています。

「暮らしとからだ」第560号(2010年10月1日付)

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