健康コラム

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総合診療科の役割

汐田総合病院 総合診療科 鈴木 義夫 医師

 

 

臓器別治療から全身管理へ

 

 日本の内科医療は、消化器、呼吸器、循環器など臓器別に専門家がそれぞれの領域を研究することにより発展してきました。患者さまが比較的若年の時代にはそれでよかったのですが、高齢化が急速に進む社会となり、複数の臓器にわたる疾患を併せ持つ方が増え、臓器にとらわれない幅広い知識が求められるようになってきました。
 高齢者医療を進めていくには生活状態、家庭環境、経済状態なども考慮し、全人的なケアが必要とされます。長期にわたる関係性を構築し、健康を維持していくためのサポート体制が必要となります。

 

総合診療の役割

 

 病院を訪れる患者さまは様々な症状があり来院され、その中には専門的な治療が必要な方もおられます。その場合に総合診療医は、適切な診断をくだし、高次の専門医療機関に紹介することを行います。
 患者さまを取り巻く環境も変わりつつあり、ひとり暮らしであったり、在宅往診を受けていたり、施設入所中の方など、入院中から退院後のケアも視野に入れた治療をしていく必要性が生まれています。高齢者は入退院を繰り返すことも多く、ご家族さまとも十分な意思疎通をとりながら、退院につなげていくことが重要と考えております。

 

総合診療が多くの方の役に立てるように

 

 総合診療医の『一人の患者さまを全身からチェックしてゆく』というスタイルは、新しく医師となった研修医にとっても魅力的で、志望者も年々増えています。
 私たちが扱う疾患は日常的には、誤嚥性肺炎、尿路感染症などの比較的ありふれたものが多いですが、その中でも稀な疾患や、診断や治療が難しい症例に出会い、ほかの研究論文を参考にするなどの必要性が生じることも少なくありません。そうした症例をまとめ論文にすることも、自分たちのモチベーションを高めるために重要な手段と考えております。
 私たちの医療活動が少しでも患者さまのお役に立つよう、向上心をもって日常診療に取り組むように心がけております。

 

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