健康コラム
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認知症の正しいご理解を(2)
リハビリテーション課部長 宮澤 由美医師
アルツハイマー型認知症とは
日本人の認知症の原因疾患として、最も多い病気はアルツハイマー型認知症です。この病気は、脳にアミロイド・ベータという異常な蛋白がたまることで、正常な神経組織が少なくなり、次第に脳が萎縮していく病気です。なぜ、異常な蛋白がたまるかという原因は不明ですが、現在は塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)という薬が、脳の中のアセチルコリンという物質を高めることで進行を遅らせる薬として用いられています。2007年12月より重度の方にも用いられるようになりました。
今、世界中でアルツハイマー型認知症の薬の開発が進んでいます。日本でも来年にはもう一つ新しい薬が発売されるだろうと予想されています。それとは別に最も注目されている薬は、ワクチン療法といわれるもので、欧米では注射、日本では口から飲む薬の開発が進んでいます。これは根本治療に近いといわれており、このような治療が展望できるようになると、なおさら早期発見、早期治療が必要となってきます。
薬物療法以外の治療法は
薬物療法以外に心理療法と呼ばれる治療法もあります。回想法や音楽療法、バリデーションなどです。臨床心理士などの専門スタッフ、デイケアや老人保健施設などのケアスタッフが行います。過去のくらしや生活の知恵を聞くことで、気持ちを整理し、明日を生きる活力を見出す回想法、認知症により言葉が失われつつある方への音や音楽による刺激、相手への共感を重視し、混乱した行動や会話も意味があるとするバリデーション、いずれも、認知症の方の心身の安定のための方法です。
ケアの大切なポイントは
このほかに、接し方やケアの仕方、環境も大事です。実際、周辺症状の徘徊や妄想などは周囲の環境によってコントロールできる場合があります。認知症の人は不安や混乱を抱えて日々生きています。慣れ親しんだ暮らしや環境、穏やかな口調、ゆっくりとした接し方が本人を安心させ、落ち着かせるケアの大切なポイントです。
「暮らしとからだ」第540号(2009年2月1日付)