健康コラム
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ボケ防止講座(7)「効果的な脳の訓練」
うしおだ老健やすらぎ施設長 天野 皓昭医師
最近、認知症や介護関連のテレビ番組が増えてきました。その理由は、多くの高齢者が、わが身のこととして認知症になることへの不安と、認知症患者を抱えた家族の深刻な問題があるからです。
前頭(ぜんとう)前野(ぜんや)と言う脳の部位の萎縮がボケの進行と深く関係していることは、9月号にも書きました。最近の研究では、脳の持続的刺激が、ボケ防止や改善に役立つことがはっきりしてきております。
効果的な学習とは
読み書き、計算が効果的です。その内容は、あまり複雑な思考よりも、容易な学習の方が、前頭前野を刺激することがわかってきました。声を出して読むこと、手で字を書くことが良いようです。小学校1、2年生レベルの算数計算や国語の読み書き、また、児童向けの物語を読むのも良いようです。ですから、3世代や4世代が同居し、お年寄りが読み聞かせるのが理想的ですが、核家族化が進んでおり現実的には無理です。そこで考えられるのが地域社会で取り組む方法で、高齢者と保育園や幼稚園の交流なども一法です。
パソコンは脳の活性化には役立たない
パソコンが普及し、パソコンを使う機会が増えてきました。コンピューターは、人の脳に代わる機能を持たせるために開発されたものです。ですから、コンピューター機能が発達すればするほど、利用する人は自分の脳を使わなくなるのは当たり前なのかもしれません。パソコン入力よりも手書きの方が脳を刺激するようです。漢字を思い出す場合でも、パソコンは勝手に選んでくれますが、自分で書くとなるとそうは行きません。自ら自分の記憶から引き出してくる必要があります。これが持続的な脳刺激の源なのです。
テレビ番をしない
一日中テレビをつけっぱなしの人が多いと思います。特に独居生活の場合は、なおの事です。最近の研究では、人がテレビを見ているときは、脳の90%は眠っていることが分かってきております。ちょっと難しい番組ですら、それほど脳は刺激されていないそうです。見たい番組だけを見るようにして、つけっぱなしは止めましょう。
友の会のサークル活動は有意義
気心の知れた人が集まって、一つの事に取り組むのはすばらしいことです。出掛けるには、日時の管理が必要ですし、身だしなみにも気配りをします。参加すると、手を動かしたり、身体を動かしたりしながら、人と話をする機会も増えます。作品を作ったりすると、少しでも良いものを作りたいとの意欲も出てきます。
これからは、チャンスがあればその中に、頭の体操の時間を加えて貰えるともっと良いと思います。
「暮らしとからだ」(2008年3月付)