健康コラム

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横浜市の救急体制(後編)

汐田総合病院 救急科 北野 光秀 医師

前回からの続き

 

3.三次救急
 三次救急では、心肺停止や呼吸・循環に異常のある最重症患者さんを救急車が近くの救命救急センターに搬送します。横浜市では意識昏睡(JCS―3桁※)や、薬物中毒の患者さんも救命センターに運ばれます。
 鶴見区では済生会横浜市東部病院が救命救急センターです。近隣では横浜労災病院や川崎市立川崎病院も救命センターです。医師や看護師が4~7人のチームを組み、超緊急で救急外来で医療処置などを施行し、場合により緊急手術を施行します。初期診療の後、ほとんどの患者さんは集中治療室で入院診療を行います。
 心肺停止の患者さんで残念ながら救命できなかった方は、詳細な死因が不明なことから死亡診断書の記載ができず、警察の方がご遺体を引き取ります。検視・検案を行い、必要な場合は解剖も施行します。

 

4.アドバンス・ケア・プランニング
 心肺停止や重症の状態では、通常三次救急が選定され、救命救急センターに搬送されます。同センターでは人工呼吸管理や多種のカテーテル挿入、血液浄化療法など徹底した集中治療が施行されます。ご高齢の方や慢性疾患で長く苦しまれてきた患者さんがこのような状態になったとき、さらなる集中治療や手術をご希望されないことも多いと思います。
 具合が悪くなる前の意識がしっかりしている時に家族と話し合い、さらにかかりつけ医とも相談してアドバンス・ケア・プランニング(略してACP。厚労省は「人生会議」と呼称)を行い、事前指示書を作成しておくことをお勧めします。最近は老人保健施設入所時などに作成している施設もあります。
 これがあれば救急隊員は搬送先の救急担当医と相談して、心肺停止など重症状態でも救命センターではなくかかりつけ病院に搬送することが可能です。また受入病院でも体の負担となる侵襲的治療を行わずに済み、患者さんは安らかに人生最後の時間を過ごすことができます。
 最後に、事前指示書のような書類が準備できなくても、ご高齢のご家族がある方は、本人の意向をもとにかかりつけ医の意見も含め、万が一の時の医療行為(人工呼吸管理、血液浄化、強い昇圧剤の使用など)に関して、あらかじめ話し合っておくことをお勧めします。

 

※JCS…意識レベル(Japan Coma Scale)意識清明状態を0として、I~Ⅲの分類の中でさらにそれぞれを3段階で評価します。数字が大きくなるほど重度の意識障害であることを意味します。

 

 

 もしも手帳とは、「もしも」に備えて元気なうちにもしもの時の治療やケアについて、今考えていることを記しておくもの
 区役所・地域ケアプラザ・調剤薬局でお尋ねください

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