健康コラム

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高齢者の貧血(前編)

汐田総合病院 総合診療科 田近賢二医師

 2023年4月から汐田総合病院総合診療科で勤務している、田近賢二と申します。大学卒業後から血液内科一本で仕事をしていたので、今回は血液の病気で、多くの方に馴染みのある「貧血」について、特に高齢者に関係することをお話したいと思います。

 

貧血とは何でしょうか?

 皆さんは「貧血」という言葉を耳にすると、起き上がったときなどに急にフラッとする、急に目の前が暗くなるような状況を思い浮かべるかもしれません。しかし、これは医学的には「貧血」ではなく、「立ちくらみ」というものです。
 医学的な「貧血」とは、細胞が活動するために必要な酸素を供給する「赤血球」の絶対的な量が不足している状況のことをいいます。なお、赤血球とは血液の中を流れる細胞の一つで、「血」が赤く見えるのはこの細胞が赤い色をしているからです。

 

貧血の原因はどのようなものがあるのでしょうか?

 では、どのような原因で「貧血」になるのでしょうか。第一は赤血球が体から失われてしまう「血液のロス(出血・破壊)」によるもので、若い女性の生理や、消化管出血などの出血、溶血(血液が壊れてしまう状態)によるものです。第二は赤血球を作るための原料・ホルモンの不足によるもの、第三に血液を製造する工場である骨髄という臓器に異常が生じた場合です。

 

高齢者の貧血に特徴はあるのでしょうか?

 高齢者は多くの病気をお持ちのことがあり、それらの病気の影響で貧血となっていることがあります。持病のため血液を失ったり(痔からの長期にわたる出血も原因の一つとなり得ます)、関節リウマチや長年にわたる感染症などの慢性的な炎症のために血液を作る原料である鉄をうまく利用できなくなったり、腎臓病のため血を作るホルモンが不足していたり、血を作る臓器(骨髄:文字通り骨の髄です)が障害を受けている場合もあります。
 様々な原因により貧血となるのですが、胃の老化現象による貧血も意外に多くみられます。少し詳しくお話しましょう。

 

(次号へ続く)

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