健康コラム
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歯周病は動脈硬化に対する新たな危険因子
うしおだ診療所 所長 渡部琢也医師
本紙の昨年1月号に「動脈硬化について」を寄稿致しました。
更に詳しく紹介すると、動脈硬化には、コレステロールが動脈壁に沈着してできる粥腫(プラーク)の形成を伴う粥状硬化と動脈の中膜にカルシウムが蓄積(石灰化)する中膜硬化(メンケルベルグ型硬化)があります。動脈硬化は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙、ストレス、加齢の7つが古典的危険因子とされてきました。
しかし、頸動脈エコーを施行していると、上記7因子がなくても、動脈硬化が存在するケースがあります。最近、動脈硬化と慢性炎症との関連についての研究が進んできており、なかでも歯周病が動脈硬化(粥状硬化と石灰化)を悪化させることが明らかにされてきました。
歯周病はグラム陰性桿菌による慢性感染症です。グラム陰性桿菌の細胞壁中のリポポリサッカライドは内毒素(エンドトキシン)であり、これが炎症を起こした傷の内部の毛細血管から血中に侵入してエンドトキシン血症になります。エンドトキシンは、単球・マクロファージを活性化され、腫瘍壊死因子αやインターロイキン6等の炎症性サイトカインが産生されます。これら及びエンドトキシン自体が、血管内皮細胞の傷害・炎症、単球由来マクロファージの泡沫化、血管平滑筋細胞の増殖及び石灰化を促進し、動脈硬化病変が形成されます(図1)。よって歯周病は、動脈硬化性疾患である虚血性心疾患、脳卒中、閉塞性動脈硬化症、血管性認知症を引き起こすことになります。
エンドトキシンが動脈硬化(粥状硬化及び中膜石灰化)を引き起こすメカニズム
歯周病と頸動脈硬化
うしおだ診療所の内科外来に生活習慣病で通院している120例及びボランティア4例の計124例(年齢:40―89歳)に対し、歯科診察による歯周病の評価と頸動脈エコーによる動脈硬化の重症度を計測しました。動脈硬化病変は歯周病の重症化に伴い進展していたことが認められ(図2)、重症の歯周病患者では動脈の石灰化が高頻度(78%)で認められました。このように同診療所内での医科歯科連携により、患者様の生活習慣病と歯科疾患を包括的に治療・予防していく取り組みを行なっております。
歯周病と頸動脈硬化との関係