健康コラム

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鼠径ヘルニア(脱腸)って知っていますか?(後編)

汐田総合病院外科 池田裕一医師

 

(前号から続く)

 

鼠径ヘルニアになりやすい人

 鼠径ヘルニアは、乳幼児の場合はほとんど先天的なものですが、成人の場合は加齢により体の組織が弱くなることが原因で、特に40歳以上の男性に多く起こる傾向があります。
 鼠径ヘルニアの発生に職業が関係していることが指摘されており、腹圧のかかる製造業や立ち仕事に従事する人に多く見られます。便秘症の人、肥満の人、前立腺肥大の人、咳をよくする人、多産もしくは出産後の人も要注意です。

 

鼠径ヘルニアの治療

 成人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。手術のみが治せる治療です。

 

鼠径ヘルニアの手術法

①人工補強材(メッシュ)を使用しない鼠径部切開法
 長い歴史のある術式で、自分の腹部筋肉や筋膜を糸で縫い合わせる方法です。縫い合わせた部分に術後の強い痛みや、つっぱりの部分が裂けて再発することが多くあります。
②メッシュを使用した鼠径部切開法
 現在の標準的な治療方法の1つです。術後の痛みが少なく、再発も極めて少ないです。
③腹腔鏡法
 お腹に5~10mmの孔を3ヶ所開けてカメラと鉗子を挿入し、腹腔内(お腹の中)の映像をテレビモニターで見ながら行い、メッシュを用いて弱い筋膜を補強する方法です。術後の痛みが少なく、早く元の生活に戻れます。全身麻酔が必要です。

それぞれの手術法の長所と短所

 各手術にはそれぞれ長所と短所があり、当院では腹腔鏡法を基本術式としています。患者さんの全身状態、生活状況、希望などを充分配慮のうえ、方針を決定しています。
 鼠径ヘルニアが疑われるような症状に気づかれた方は、お気軽に当院外科までご相談ください。

 

手術法 長所・短所

①・人工補強材を用いない
 ・術後の痛みやつっぱり感がやや強い
 ・術後安静期間が少し長い・再発率がやや高い
②・術後のつっぱり感がやや軽い
 ・入院期間が短く社会復帰が比較的早い
 ・再発率が低い
 ・人工補強材を使用するため、感染があるときは制限される
③・術後の痛みやつっぱり感が殆どない
 ・入院期間が短く社会復帰が早い
 ・再発率が低い
 ・両側行う場合でも同じ傷でできる
 ・全身麻酔が必要
 ・手術時間が少し長い
 ・費用が少し高い

ヘルニア倶楽部HPより抜粋

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