健康コラム

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在宅看取りの勧め(後編)

うしおだ在宅クリニック所長
塩田 純一医師

(前編)はこちら

 最期の時が近づいてからでも自宅に療養の準備をして、帰宅して介護で慌てることなく生活できるようにできます。自宅退院して大変なのは介護するご家族や同居者なので、あらかじめ介護の負担を軽減するために介護しやすいベッドを設置したり、ホームヘルパーや訪問入浴、訪問介護などの準備をしておきます。また自宅で苦しい、痛いなどの症状がある時に、往診で対応もでき、呼吸が苦しいときに自宅に用意した酸素を使ったり、癌性の疼痛などで激痛がある時に麻薬での疼痛管理もできます。

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 在宅でコントロールしきれない時には一度再入院して、コントロールしてから再度退院することもできますので、入院・退院・在宅医療は別々のものではなく、その時の状態やご希望に合わせて使い分けていくことができます。また入院継続中に最期が近いと感じて、自宅死を希望して大急ぎで退院する方もいらっしゃいます。

 先に述べたように注意すべきは自宅療養を希望されて帰宅される方よりも、身近な介護者に負担がかからないように準備が必要です。特に老々介護が増えていますので、患者さん自身より介護者が倒れて重症になってしまうケースも多々あります。

患者さんの少しの変化も見落とさないように、ベッドサイドに昼夜もなく付添っているご家族を見かけますが、介護するご家族が倒れるのが在宅医療を継続できない一番の原因になるのです。往診時に必ずお伝えするのは、介護サービスは患者さんだけの為ではなく、介護者の為に導入してください。

 病気の時は病院にいて医師や看護師が安心感をもたらせてくれます。レントゲンの機械や人工呼吸器でさえ安心感を与えてくれます。しかし最期の時は人工呼吸器の音や看護師が走り回る足音、病院の天井などを見ているよりは、お孫さんの声やセミの鳴き声、近所を走る電車の音などが心の安らぎをもたらすようです。あなたの選択をあらかじめご家族に伝えておきましょう。

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