健康コラム

掲載日:

糖尿病と眼の病気

汐田総合病院 眼科
犬伏 ルル医師

 糖尿病とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作用不足により慢性の高血糖をきたす疾患です。

 高血糖状態の持続は血管障害をきたし、網膜症、腎症、神経障害など様々な合併症を引き起こします。

 網膜症は適切な血糖コントロールと治療により、発症・進行を抑制できるようになってきましたが、初期の段階では自覚症状がほとんどないため、重症になるまで放置してしまうことがあります。

 糖尿病と診断された場合には自覚症状がなくても定期的に眼科を受診し、早期発見・早期治療に努めることが大切です。

糖尿病網膜症とは

 眼の一番奥、眼底には網膜という神経の膜があり、多くの毛細血管があります。糖尿病の患者さんの血液は、糖が多く固まりやすい状態になっているため、網膜の毛細血管を詰まらせたり、血管の壁に負担をかけて、眼底出血を起こしたりします。血液の流れが悪くなり、網膜に酸素や栄養素がいかなくなります。これが糖尿病網膜症の原因となります。進行した場合には硝子体で大出血が起こり、近年でも、毎年約3000人の方が失明に至っています。

 発症は、糖尿病の罹患期間と密接に関係しています。糖尿病を無治療で放置した場合には、7~10年で約50%、15~20年以上で約90%です。単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症の順に進行していきます。

糖尿病の主な眼合併症

  1. 糖尿病網膜症30~60%
  2. 白内障20~60%
    水晶体の混濁が若齢より進行します。
  3. 黄斑症10~20%
    ものが歪んで見え、視力が低下します。
  4. 角膜障害10~70% 
  5. 血管新生緑内障3~5%
    眼圧が上がり、視野障害をきたします。
  6. 屈折・調節異常2~8%
    老眼を若齢より自覚します。

糖尿病網膜症の発症・進行を抑制するために

  • 血糖コントロールが不可欠です。初期の網膜症では、血糖コントロールによって、眼底出血が改善することもあります。HbA1c7%未満を目指しましょう。◦主治医の指示に従って、自分の症状にあった運動をしましょう。
  • 規則正しい生活を心がけましょう。
  • 繰り返しになりますが、早期発見をし、進行をくい止めるためにも、眼科での定期的な検査が大切となります。

692-1

「加藤浩晃・著.眼科検査Note.2010年,メディカ出版より転載]

健康コラムの一覧へ