健康コラム
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特発性正常圧水頭症とは
立川相互病院 後期研修医 水谷 哲也医師
(汐田総合病院 神経内科で研修)
最近、歩きにくくなっていませんか?
物忘れが始まっていませんか?
特発性正常圧水頭症とは、何かしらの原因で頭蓋内に髄液が溜まり、脳が圧排され、歩行障害・認知症・尿失禁などの症状が出る病気で「治療で改善できる認知症」として注目されています。
特発性正常圧水頭症の罹患者は全国に37万人いるとされながらも、その特徴が加齢に伴う症状に似ているため、歳のせいと見逃され、治療の恩恵を受ける患者さんは全体の約1割にも満たないのが現状です。
しかし、適切に診断され治療が行われれば、症状は改善され、生活の質は向上します。
特発性正常圧水頭症の症状
特発性正常圧水頭症の病気のサインは、歩行障害・認知症・尿失禁の3つと言われています。
特に歩行障害が重要な症状で、最初に出る症状であることが多いです。歩行障害の特徴は、歩行が不安定で、ひざを上げづらく、すり足になり、歩幅も小刻みになります。そして足を広げて歩くようになることが特徴です。特にUターンする時によろめきが強く、転倒することがあります。障害が強くなると第一歩が出ずに歩き始められなくなります。
また症状が進行していくと、歩行障害に加えて、認知症(自発性がなく、思考や行動面での緩慢さが目立つ)や尿失禁(トイレが非常に近くなったり、我慢できる時間が短くなったりする)などの症状が出てくるようになります。
高齢者で増える正常圧水頭症「早期発見・早期治療を」
特発性正常圧水頭症はすぐさま生命にかかわる病気ではありませんが、転倒による骨折で寝たきりになったり、認知症や尿失禁が進行することは患者・家族に大きな負担となります。
根本治療は「髄液シャント術」という外科手術となるため、症状が進行した例や身体合併症が多い方では治療が望めない可能性もあります。早期発見が治療成功の重要なポイントとなるため、少しでも歩行がおかしいと思ったら、まず近くの医療機関に相談してください。