健康コラム
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虚血性心疾患、最近の治療
循環器 菊池正医師
今回は、虚血性心疾患の最近の治療についてお話します。
虚血性心疾患治療の最終ゴールは、(1)発作の予防と発作時の治療、quality of life の改善。(2)二次予防、すなわち再発予防です。
治療には、最近よくテレビで放映されているカテーテルによる冠動脈拡張術と薬物による治療があります。
症状改善のカテーテル治療について
経皮的冠動脈形成術(カテーテルを用いてバルーンやステントで冠動脈拡張する)は、日本に導入されて約30年。外科的手術に比べて患者様の侵襲が少ないため、心筋梗塞・狭心症など虚血性心疾患の中心的な治療法として普及し、ここ15年は目覚ましい進歩をとげてきました。しかし、バルーンやいままでのステント(血管を拡張する金属)では、三カ月から半年で、また治療した部分が狭くなる(再狭窄)ことが問題となっていました。
再狭窄予防薬が塗布されたステントの登場
2004年から日本でも、再狭窄予防のお薬が塗布されたステントが使用できるようになり、再狭窄は以前の三分の一まで減少しました。すなわち、短期間での症状の改善はたやすくなりました。しかしながら、動脈硬化は冠動脈造影では正常に見えても、冠動脈の至るところに存在し、また全身の血管にも同時多発的に生じることが最近わかってきました。
再狭窄予防には全身管理が必要
カテーテルによる局所の治療だけでは、再発は予防できず、薬物による血圧や糖尿病、コレステロール値などの全身管理が重要であるといわれています。完全禁煙、血圧は目標140-130/90-80mmHg、コレステロールは(LDL 100mg/dl 以下)、毎日30分、週5日の運動、体重管理(BMIが、18.5~24.9kg/m2になるように食事の管理)、糖尿病の管理(HgAlC 7%以下)は言うまでもありませんが、症状が安定した後もリスクの包括的管理が必要です。
「暮らしとからだ」第544号(2009年6月付)