健康コラム
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慢性疼痛治療 〜運動療法編〜
汐田総合病院 リハビリテーション課
作業療法士 竹本 龍太
これまで「慢性疼痛」の現状や、当院で実施している心理的アプローチについてご紹介しました。今回は「運動療法」についてお話させて頂きたいと思います。
自分に合った運動を
運動療法を実施する際、始めにご理解を頂きたいのは「自分に合っている運動」を継続して行なっていくのが重要だということです。
原疾患や年齢・筋力・体力に合わない運動を無理に行うと、かえって疼痛を悪化させてしまうという報告もあります。そのような事態にならないために、必要に応じて医療従事者が助言をさせて頂くことがあります。
私たちは、事例報告や研究、「ガイドライン」と呼ばれる科学的根拠に基づく意思決定を支援するために、最適かつ推奨されるものを提示した文書を参考にしています。今回は、2018年に発行された「慢性疼痛治療ガイドライン」における運動療法の一部ご紹介させて頂きます。
運動療法が推奨される症状
運動療法の実施を強く推奨されているのは「慢性腰痛」と「変形性膝関節症」です。
これらは安静や生活指導等と比較して、運動療法を行ったほうが有効だと言われています。有酸素運動(ウォーキングなど)、筋力トレーニング、ストレッチ(柔軟体操)を行い、関節可動域の維持・改善、筋力の強化、呼吸機能の向上を図ることが良いとされています。
特に慢性腰痛に対しては、脊椎の安定性向上を目的に「モーターコントロールエクササイズ(MCE)」と呼ばれる腹横筋や内腹斜筋、多裂筋などの体幹深層筋群の筋力向上を図ることで疼痛改善効果があると認められています。
膝痛について、痛みが強く陸上では行えない場合でも水中運動によって痛みがわずかに軽減することも報告されています。
無理のないプログラムを
「ヨガ」「太極拳」「気功」「ピラティス」「ラジオ(テレビ)体操」は一部で効果があったという報告もありますが、現時点では有効だという報告は少ないようです。
「マッサージ」は首の痛みに対してはあまり推奨されておらず、腰痛に対しても短期間で弱い鎮痛効果のみ示されています。
ただ、どの運動も様式によっては疼痛の発生、増悪といった有害事象も報告されています。やはり無理のない範囲でのプログラム設定が重要です。
私たち作業療法士や理学療法士はこれらの知見をもとに、疼痛除去だけに主眼をおくのではなく、社会への参加(復職や地域活動への復帰)やQOL (生活の質)の向上を図れるよう個別にプログラムを組みながら介入させて頂いております。