健康コラム
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痛みと心の不思議な関係
汐田総合病院 臨床心理士
有子山 布美子
なぜ慢性痛にカウンセリングが有効なのか?
私たち臨床心理士は、医師のように直接痛みに作用する鎮痛薬を処方したり、外科的手術を行うことは出来ません。しかし、慢性痛には身体的な要因、環境的な要因、心理的な要因が複雑に絡んでいることが分かっており、以下のような方法でアプローチが可能になります。
痛みはストレス
痛みは嫌な感覚です。痛みがストレスとして認識されると脳は興奮し、体は戦闘モードとなります。これは異常を素早く察知して原因に対処する為の反応で、短期的には役に立つのですが、痛みが長引くと血糖や血圧が上がったり、免疫力が低下します。便秘や胃もたれ、不眠などの症状が出ることもあります。
カウンセリングでは初期にリラクゼーションについてお話をします。呼吸を整えたり、緊張した身体の筋肉を弛緩させる方法を覚えることで、副交感神経を優位にして身体のストレスを減らしていきます。
痛みを悪化させる感情・考え方・行動
怒っている時、不安な時、落ち込んでいる時に痛みが強くなった経験はありませんか?ストレスが存在すると、ノルアドレナリンが分泌され、痛みを感じる神経や受容器を刺激することが知られています。
さらに慢性的なストレスは痛みを抑制するセロトニンの神経の働きを阻害する為、痛みに敏感になっていきます。また、こうあらねばならないという完璧主義的な考え方、自分はダメだという自己否定的な考え方、これは悪い病気に違いないという悲観的な考え方などは、不快な気分を生じさせることがわかっています。
このような考え方を持つ人は、痛みを我慢して無理に家事や仕事を頑張ってしまったり、過度に安静にして痛みを避けようとするなどの極端な行動をとることがあります。
結果、痛み↓ネガティブな考え↓不快な気分↓極端な行動↓痛みが増強・維持されるという悪循環に入ってしまうことがあります。
カウンセリングでは、痛みに影響を与えている要因をできる限り減らしていけるよう、一緒に考えていきます。
生活の質を高める
まずはじっくりお話を聞かせてください。痛みは人それぞれ違います。カウンセリングを通して、痛みの感じ方やご自身にとっての痛みの意味(重要性)が変わる可能性があります。痛みに捉われすぎずに好きなことに取り組めたり、心地の良い時間を増やしていくこと、自分らしい生き方を選択していくことが、カウンセリングの目標となります。