健康コラム
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先進諸国で大流行〝慢性疼痛〟
汐田総合病院 整形外科 佐々木 正造医師
慢性疼痛という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。正確には「病気や怪我が治るまでに要すると見込まれる期間の枠組みを超えて持続する痛み」のことを慢性疼痛といいます。昨今、この慢性疼痛が先進諸国で大流行していることがわかってきました。
日本では成人人口の22・5%(推計2315万人)が慢性疼痛を有しており、米国では痛みに要した医療費と痛みのために就労できない経済的損失を合算した社会的損失額が年間6400億ドルと推定されています。ちなみに心臓病治療に要した医療費総額が約3000億ドル、がんに要した医療費が2400億ドルということですからその深刻さがわかります。
皆さんの中にも「腰が、膝が、肩が、ずっと前から痛い」という方がいらっしゃると思います。痛みが治るのをあきらめて上手に痛みと付き合っている方、なんとか痛みを治そうと病院、整骨院、鍼灸、マッサージなどに通い続けている方もいらっしゃることと思います。
慢性疼痛の主な原因として変形性関節症、関節リウマチ、腰部脊柱管狭窄症、五十肩、ケガの後に残る痛み、手術をした部位に残る痛み、などがあります。
主な治療法として生活指導、お薬、注射、物理療法(温め、冷却、電気など)、運動療法、心理療法などがあります。
痛みが発生して3カ月以上経過すると完治が難しくなるといわれますが、あきらめろということではありません。
例えば花粉症が「完治はできないが、症状が出ないように抑え込むことが出来る疾患」であるように、完治が難しい場合には目標を「痛みが気にならない状態にもっていくこと」とします。
現在汐田総合病院の整形外科では、治りにくい慢性疼痛に対する取り組みを行っており、その中でも有効な治療法として、リハビリと心理療法があります。