健康コラム

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ギャンブル依存症について

うしおだ診療所 所長
精神科 野末 浩之医師

 横浜市長が唐突にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を表明しました。このままではカジノによるギャンブル依存症患者の多発は避けられないと、県内の精神科医師たちが誘致への反対を表明しています。今回は「ギャンブル依存症」について説明してゆきます。

 米国精神医学会による「ギャンブル障碍」の診断基準を、以下に示します。

ギャンブル障碍 診断基準

  1. 興奮を求めてギャンブルに使う金額が次第に増えている。
  2. ギャンブルをやめているとイライラして落ちつかない。
  3. 何度ギャンブルをやめようとしてもやめられない。
  4. いつも頭の中でギャンブルのことばかり考えている。(例:次の賭けの計画を立てること、賭博をするための金銭を得る方法を考えること、を絶えず考えている)
  5. いやな感情(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ)や問題から逃れようとしてギャンブルをする。
  6. ギャンブルで負けた後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)
  7. ギャンブルへののめり込みを隠すために、家族・治療者やその他の人びとに嘘をつく。
  8. ギャンブルのために、人間関係や仕事、学業などがそこなわれている。
  9. ギャンブルでつくった借金を他人に肩代わりしてもらっている。

 過去12か月間に9項目中のうち4~5項目以上あてはまれば軽症、6~7項目で中等症、8~9項目で重症と判定されます。

 2017年の全国調査で、ギャンブル障碍の有病率が明らかになりました。男性の6・4%、女性0・6%、全体3・6%で有病者320万人とされています。この病気により被害を受けるご家族など周囲を含めるとおよそ一千万人が苦しんでいると推測されています。国は最大のギャンブル産業であるパチンコを「遊戯」と言い張っており、そこに民営ギャンブルであるカジノが加わったら、さらにギャンブル依存に陥る人が増えると考えられます。

 治療は、医療機関における正確な診断および心理教育(疾病のなりたちと回復方法について学ぶ)、そして自助グループ(問題や悩みを抱えた人が同様な問題を抱えている個人や家族と共に当事者同士の自発的なつながりで結びついた集団)への参加が勧められています。

 この疾患は、当事者からの自主的な受診が難しいことも知られています。周囲にいる方、ご家族には医療機関、行政の担当窓口に積極的に相談されることをお勧めします。

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