健康コラム
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「抗生物質が効かない薬剤耐性菌から命を守る」いまどきの医療と技術(3)
汐田総合病院 薬剤部 栄 拓也
薬剤耐性(AMR)対策アクションプランという言葉をご存知でしょうか。1980年代以降、抗菌薬(抗生物質)の効かない薬剤耐性菌が世界的に増加しています。薬剤耐性菌は国際社会でも大きな課題となっており、このまま何も対策を取らないでいると薬剤耐性菌による死亡者数は、がんを上回るという予測となっています。
このため、世界保健機関(WHO)で採択された薬剤耐性アクションプランには、不必要な抗菌薬を減らすことが明示されています。
抗菌薬は正しい使い方を
薬剤耐性菌の増加を防ぐ為には、みなさんの協力が不可欠です。感染症に罹らないように予防をすることも重要ですし、単純に不要な抗菌薬はもらわないことが大事です。一般的に風邪の症状や下痢症状などは抗菌薬が不要であることが多いと言われています。
このような症状で受診した際に抗菌薬が処方されなくても、「念のため…」と言って、もらわないことが大切です。不要なケースで抗菌薬を飲むと思わぬ副作用がでたり、耐性菌を作ってしまう可能性があります。
また、抗菌薬が出された際には基本的に飲み切らなければ症状の再燃や耐性菌の原因になりえます。自宅に残っていた抗菌薬や他人からもらった抗菌薬を自分の判断で服用すると効果がでないケースが多く、当然耐性菌の出現リスク増大につながります。更に、重要な感染症の発見が遅れる原因にもなります。
意識して抗菌薬の適正使用を行うことは、自分の近い将来の命を守り、この先の子供・孫世代以降の未来を耐性菌の脅威から守ることに繋がります。
病院で対策チーム発足
抗菌薬の適正使用を目的として当院でも今年度から抗菌薬適正使用支援チームを発足しました。現在のメンバーは医師1名、看護師2名、臨床検査技師2名、薬剤師2名。となっています。主に入院中の方を対象として、感染症治療の早期モニタリングを行い、抗菌薬の適正使用や検査利用の適正化を推進する活動を行っています。
治療の成功率上昇や副作用発現率低下、耐性菌出現抑制が期待されます。
*参考資料「AMR臨床リファレンスセンター」 http://amr.ncgm.go.jp/pdf/lr-l4.pdf