健康コラム
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歩行障害
神経内科部長 南雲清美医師
はじめに
歩行障害は、60歳以上の高齢者の15%に、さらに老人施設入所者の40から50%に歩行障害や易転倒性があると報告されています。
自覚症状は
歩行障害の自覚症状としては、ちょこちょこ歩きになった(小刻み歩行)、歩いていると突進してしまう(突進現象)、階段を降りるときに歩く時不安定でよろめく(失調性歩行)。また足を引きずる、足が上がらない。足がビリビリして上手く歩けない、長く歩くと足が痛くなる、足に力が入らない(間歇性(かんけつせい)跛行(はこう))があるときには要注意です。
歩行障害の診察は
歩行速度、歩幅、一分間の歩数、歩隔は歩行の基本的指標として評価します。さらに全身を二つに分けて評価します。第1には姿勢保持部分である頭部・体幹部です。その部位の姿勢・平衡機能が保たれているかを検討しますが、それに有用なのはハンカチ現象です。患者様と医者とが三角に折ったハンカチの一端を各々一方の手でつかみ軽く横にひきながら歩くと、体軸の揺れが少なくなり歩行障害が改善します。第2には動力部分の下肢が正常に動くかを下肢の筋力、筋緊張、感覚障害、運動失調の有無で調べます。
原因としては
大脳白質の多発性脳梗塞、水頭症、小脳疾患、パーキンソン病(症候群)、脊髄障害、糖尿病などの末梢神経障害、多発筋炎、腰部脊柱管狭窄症、胸・腰椎圧迫骨折などがあります。神経学的診察をおこない、必要に応じMRI、神経伝導検査、筋電図などの検査を行います。
治療は
脳梗塞、水頭症、パーキンソン病などの各種神経疾患、整形外科的疾患に対し有効な治療があります。それと共に体軸のバランスと下肢の筋力維持と運動能力向上のため歩行のリハビリを行うのが肝要です。歩行障害を自覚したら早めに来院しましょう。
「暮らしとからだ」(2008年5月1日付)